〇北海道電力の泊原子力発電所の再稼働をめぐり、原子力規制委員会の審査会合が31日開かれた。驚くべき問題が浮き彫りになった。泊原発1~3号機で最後に運転停止したのは2012年5月。審査に必要な説明は来年9月になる見通し。そのため全基の運転停止期間が10年を超えることになる。同じ時期に5つの原発10基が申請したが再稼働していないのは泊原発の3基だけだ。
再稼働の遅れの原因はいくつかあるが、敷地内の活断層の調査が長引いたことがその一つ。原発側の調査では敷地内に「活断層はない」としたが、規制委員会は「データが不足している」として17年に再調査を指示した。結局21年に「活断層はない」ことを認めた。しかしこの間4年を要した。原子力規制委員会は審査で、原発敷地内の断層が地震を引き起こす活断層であるかどうかについて、何度も原発側に説明能力に疑問を持ってきた。また火山噴火の影響調査は、16年から再開した21年まで5年もかかった。
北海道電力の対応は裁判でも同じだった。規制委員会の審査が進まず、住民側の反論への十分な対応が出来なかった。提訴から10年を超えた訴訟は、業を煮やした裁判長の決断で結審をした。運転差し止め命令だった。北海道電力は規制委員会の審査だけでなく、裁判の場でも安全性を説明することができなかった。原子力委員会の更田委員長は「社内に専門的な人材が欠けている」と指摘し人材のてこ入れを要求する異例の事態になった。原発を動かす能力があるのか疑問を持たれても仕方がない。